根管治療の回数

根管治療の回数
根管治療、良く根の治療と説明される治療です。何かと手間がかかり、回数もかかりがちな印象お持ちの患者さん多いと思います。しかし、実際には術前の状態から概ね回数などは想定できます。最低条件として、一回の治療時間(特に1回目)はしっかりと確保できる(60~90分)前提でのお話になります(毎回では有りません)。現在の根管治療においては一回15~30分程度では標準的な治療は不可能です。
まず、基本的な回数、期間は、2回で済む場合から3か月程度となることが殆どです。
治療期間の目安、難易度は概ね以下の分類でわかります。
過去の治療回数の評価
1、 その歯にとって初めての根の治療。
2、その歯にとって2回目以降の根の治療。
病気の範囲の程度の評価。
A、根の中だけが病気になっている。
B、根の外まで病気になっている。
治療の困難さの評価
a、歯の破壊が少ない。
b、歯の破壊が大きい。
色んな区分けの仕方が有るのですが概ね以上の診断を行い、それに基づいて治療方法を決定します。また同時に治療期間を推定します。
例えば1-A-aの場合
その歯にとって初めての治療で、根の中だけが病気で、歯の破壊が少ない。
まず2回(更に条件が良ければ一回)で終わりにできます。(繰り返しになりますが1回の治療にしっかり時間を取れる場合)その際のタイムテーブルが以下の通りです。

1日目

口腔内清掃(お口の中全体を機械的に清掃)、口腔内消毒(うがい薬と消毒薬)。
麻酔の刺入点(麻酔の針を刺す場所)の消毒~局所麻酔。軟化象牙質(虫歯)の除去~隔壁。

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ラバーダム防湿、コーキング、 術野の消毒(防湿術野、歯)。
神経管へアクセス~根管形成~根管洗浄~貼薬(消毒薬を中に入れる)して仮封。

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以上で60~90分
2日目
口腔内清掃(お口の中全体を機械的に清掃)、口腔内消毒(うがい薬と消毒薬)
麻酔の刺入点(麻酔の針を刺す場所)の消毒~局所麻酔。
ラバーダム防湿、コーキング~ラバーダム。
術野の消毒(防湿術野、歯)。
仮封除去。
根管内から出血の有無の確認。
根管洗浄~根管充填。
以上60分

例えば2-B-bの場合
その歯にとって2回目以降の治療で、根の外まで病気になっており、歯の破壊が大きい。
これは手間がかかります。回数としては非常に予知性が低く、1回の治療時間が短ければ結構回数掛かります。その際のタイムスケジュールは以下の様になります。

1日目
口腔内清掃~局所麻酔までは概ね一緒ですが、その後
麻酔下にて大きな虫歯の除去。
虫歯の中まで歯茎が入り込んでいる場合は切除~止血。
暫間的なクラウンの製作。
以上60分
最も手間のかかる根管形成などまで進捗させるのは1日目では不可能です。切除した粘膜の傷口の養生、防湿の為の工作等の条件整備が必要です。
2日目以降は防湿に気を配りながら根管にアクセス。
以降は1-A-aと同じです。しかし、細菌が入り込んでいる絶対量が桁違いに多いので、消毒には回数が掛かります。
1-A-aでの
神経管へアクセス~根管形成~根管洗浄~貼薬(消毒薬を中に入れる)して仮封。
根管内から出血の有無の確認。
根管洗浄~根管充填。
と言う根管治療の中心になる作業が2-B-bではなかなかできず(当たり前ですが)、時間が掛かってしまいます。
根管治療で大切なのは、細菌を根管の中に入れない事なので、その条件が揃わない歯はまず治りません。歯の破壊が多きい(虫歯が歯茎の下まで進行、歯が割れている、根管が壊れている)などの場合、細菌を入れないという単純な条件でさえそろえる事が困難であり、まず、人工的に条件が揃えられるか、揃えられるとしたら、どんな方法が可能か、その為の材料は揃うのか?など、考慮の上作業することになり、それが出来てからようやく神経管へのアクセスが可能となります。

以上の様に治療回数は歯と病気の状態によって大きく変わります。軽症なら短期、重症なら長期となります。しかしいかに重症と言えども3か月程度で治らなければ、その後治療を継続しても成果が出ることはまず有りません。
根管治療の対象としては軽症でも、歯にとっては根管治療を必要とするほどですから重症なのです。歯にとって軽症であれば根管治療そのものが必要ありません。また、神経を残そうとすることに無理にこだわるが為にかえって重症化してしまう事も非常に沢山有ります。
病気が歯にとって軽症なうちに治療(或は予防)を必要に応じて行い、それでも根管治療に移行する必要が生じた場合、なるべく早めに根管治療を開始することが病気の重症化を防ぐ上で大切です。重症化したが故に根管治療が失敗した場合は残る方法は抜歯しかありません。

神経を取りたくない、神経の治療をしたくない、ではなく、神経を取る必要がない状態を維持するのが最も重要です。(予防ですね)