局所麻酔1 Local anesthesia1
2016年12月8日 [木] 17:04| カテゴリー:歯科治療 テクニック , 歯科治療に対する考え| コメント (0)
歯科では概ね局所麻酔での処置が殆どです。この際使用されるのが局所麻酔薬です。通常は粘膜下に注射して麻酔効果を期待します。日本以外の先進国で虫歯の治療を全身麻酔で行うことは珍しくありませんが、日本では局所麻酔で行うことが多いです。
局所麻酔薬で最もよく使用されるのがキシロカインです。これは商品名で、一般名はリドカインと呼ばれます。1943年にスウェーデン人科学者のNils LofgrenとBengt Lundquistが発見しました。
歯科用キシロカインは主成分のリドカインに、エピネフリンという血管収縮薬を配合してあります。刺入点周囲の毛細血管を収縮させ血流を阻害します。その結果麻酔薬が周囲に流れていきづらく、少量でも効果が続き易くなります。
キシロカインは歴史が長い製品です。従って後発の類似製品も多く、それなりのシェアを持っています。代表的な物としてはキシレステシンやオーラ、エピリド等です。多少成分比が異なりますが、概ね同じ用途で使用します。問題になる事はほとんどありませんが成分比の違いは認識しておく必要があります。
他にはシタネストーオクタプレシンを使用することが有ります。一般名はプロピトカイン(プリロカイン)。プロピトカインはリドカインよりも効き目が少し劣ります。また、歯科用キシロカインと同様に血管収縮薬が配合されています。こちらはフェリプレシンという薬剤で、エピネフリンよりも作用が弱いです。その代り、エピネフリンの使用し難い症例に使用できる場合が有ります。例えば高血圧の患者さん。
麻酔薬の成分構成は、麻酔薬と血管収縮薬の組み合わせだけでなく、浸透圧調整の為の等張化剤やPH調整剤、酸化防止剤が含まれています。
例外的に麻酔薬成分だけの製品としては、スキャンドネスト(メピバカイン)が有ります。メピバカインの薬効はリドカインと近似しているにもかかわらず、血管収縮薬無添加である為、効きがあまり良くありません。
結果、シタネストやスキャンドネストはキシロカイン製剤より覚醒が早いので、小さな虫歯の処置などには使いやすいです。治療が終わっても麻酔がず~っと切れないのはなんとなく不便ですよね。そんな場合もシタネストの方が楽だと思います。逆に大きな虫歯の治療や長い治療、外科処置にはあまり向いていません。
また、どんな薬剤でも万能ではありません。キシロカインの場合、高血圧や狭心症、糖尿病や脳梗塞、バセドウ病などでは慎重に使用する必要があります。
シタネストの場合はそれらの疾患を持つ患者さんには使用し易いですが、先天性メトヘモグロビン血症や重症貧血などの患者さんにはリスクが高い薬剤となります
従って、麻酔一本でも、患者さんの病歴を把握していないと危険ですね。問診票の記載や病歴の聞き取りは患者さんの安全の為に大切な事です。