コンテンツへスキップ

歯周病の治療についてのお話です。

昨今、「歯周病に画期的な治療方法が開発された」などと言う報道や、歯科医の発言が話題になります。ネット社会ですので、歯科医師よりも早く最新(?)技術の名前などをご存知の方もいらっしゃる様に感じます。

患者「この前テレビで見た骨の再生技術ってもうできるんですか?出来るならやって欲しいんですが。」

私「組織再生誘導法ですね。」

患者(あからさまにじれったそうに)「そうじゃなくてこの前TVでやってた、なんとか大学で研究中のやつ。先生知らない?」

私「研究が有るのは知ってますけど。でもまだ出来ないですよ。」

患者(あからさまに不満そう)「なんで?どうしてやってないの?」

私「TVの話を全部聞きましたか?まだ動物実験ですよ。ビーグル犬や猿の次は○○さん、人間で初めてやってみますか?紹介状書きますけど。大学で倫理委員会通さなきゃいけないし、保険効かないからものすごーく高いですよ。」

患者(あからさまに不満そう。)「そうなんですか?」

俺「そもそも骨の再生療法として現在行われている組織再生誘導法、GTRとは、1980年代にGottlowらによる猿の実験で確認された結合組織性新付着の基礎研究を、Nyman(だいぶ前に亡くなっちゃいました。)らが人間に治験を行ったところから始まります。」

「他にはブタのアメロジェニンを使用したエムドゲインによる再生療法が有ります。これは、、、、(以下長文)」

患者(納得してない感じ)「わかりました。もういいです。」

俺「ホントに良いんですか?最初の話まで繋がる様に基礎から説明しようとここまでお話したのに。」

動物実験の段階だったり、治験をろくすっぽやってないとか、臨床データの全く集まってない技術をさもすぐできる夢の治療と称して報道する現状にへきえきします。患者さんのせいだけじゃないです。同意できるのは夢の技術ってところだけでしょうか。

患者さんへの福音になる可能性をもった技術も多く含まれています。しかしその殆どはまだ体系化されていません。

まず、プラークコントロールが不十分なままでの歯周病治療の成功例など存在しません。どの国のどんな歯周病治療の教科書にもプラークコントロールが最重要であると記載されているはずです。

最重要な因子を軽視した報道や歯科広告、歯科医の発言は患者さんに誤った認識を植えつけるだけです。

また、不確実な技術を最新と称して行なっている歯科医院も多数あります。様々な治療方法をやりつくしてやむなく、最後の砦として選択するなら理解できますが、標準的な治療を無視して行なえば高い確率で失敗します。

一つの例としては、次亜塩素酸系機能水を利用した歯周病の治療はかなり安直に臨床適用されていますが、その治療方法のプロトコールなど存在しません。

「パーフェクトペリオ」について日本歯周病学会の見解 日本歯周病学会ポジションペーパー http://www.perio.jp/file/about_perfect_perio.pdf

パーフェクトペリオ以外にも同根の商品が数種類販売されています。

確かに次亜塩素酸の歯周病菌に対する殺菌効果は確実です。

しかし、作用があっても使用方法の確定していない薬剤に、安全の担保は出来ません。

少なくともプロトコールが完成してから臨床応用すれば良いでしょう。

治験を一般開業医が無断で行なっているようなものです。厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」もクリアしていない物を個人病院で扱ってよいのでしょうか?

光殺菌(PDT)による歯周病菌殺菌システムについても啓蒙は慎重に行なうべきです。

これも非常に可能性のあるシステムですが、既に患者さんには間違った形で伝わりつつあります。
「これを使えば歯周病が治る。」

歯周病が治ると言うのはどう言う状態のことを指すのか。

歯周病治癒の客観的基準はありますが、歯科医師側からの啓蒙が明らかに不足しています。

この方法での日本における代表的な歯科医師の診療室では如何に高いレベルのプラークコントロールが実践されているか、如何にに基本的な治療を重視しているか、ほとんどの患者さんはご存じ無いと思います。

新しい有望な技術は慎重に育てていかなければいびつな形で伝播し、結果的に患者さんの利益に繋がりません。

受け手側の患者さんの責任では無く、送り手側(歯科医、メディア)の問題で話を混乱させている状況は歯科界の特徴です。インプラントしかり、ドックスベストしかり、3MIXmpしかり。

一つの疾病に対して様々な治療方法があって構いません。

その方が患者さんの、病気に対する治療の選択肢が増えるのですから。治療の可能性が広がるのですから。
しかし、根拠の曖昧な治療方法でも良いのでしょうか?

(以前の原稿に加筆。またさぼり気味)